絵画と記号絵

 絵を描こうとしている。どんな絵を?とりあえず自分が直面しているのは二つ。DLさん用の作品の絵と、いわゆるそれっぽい油彩画だ。この2つはどう違うのか?
 
 油彩画は、何を描くかといえば、多分「ソノモノ」を描くことなんだろう。薄っぺらい表現をしてしまえば「リッタイ」。 でも、絵の具達は、その働きによって、絵という物質を抜け出しそっくりその実物へと成り代わることができる。肉にも、葉にも、水にもなりえる。そして、その肉を使ってえがいた人間を愛せるかどうか、友達になれそうかどうかというところまで描きえる。
 
 DLさんやコミケで出すいわゆる記号絵は、何を描くか?それはやはり、記号だと思う。その工程で、リッタイや質感と「記号らしいかどうか」が切迫した場合、それは「記号らしく」あるべきだ。 記号絵でも、リッタイや質感を伴った絵が「うまい絵」として存在するが、ヌけるかどうかは別問題だ。 美しすぎては抜けない。見るものは、クロッキーの優雅で的確な線や、正しいグレーへのグラデーションを見に来ている訳ではない。
 
 この両者はまるで違う。かにクリームコロッケ(大好き)とマックフルーリー(食べてみたい)ぐらい違う。ここを混同すると、両方ともおかしくなる。 記号絵は記号を書くんだ。石膏デッサンを取り入れる部分は一部しかない。それもものすごく都合のよい一部。おっぱいのふくらみを描くなら、そのおっぱいそのものの持つボリュームが胸骨や鎖骨の構造に優先することもある。
 
 しかし、混同してよい点もある。それは両者とも、描きあがって終わりではないということ。その絵が見たものに作用する力こそが、その絵の届く場所であるということ。そこにゴールデンルールを置くなら、描く物は見えてくる。