文字を書きたくて。

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あれ、ずいぶん間をあけてしまいましたわたくし?あれま、あっという間に。えっと、ただいま印刷所締め切りに向けて、コミケ用の新刊を描いています。当初の、「国が全滅」話は、やっぱりどうしても28Pでは収まらず。今回は一人の女が、カエルの嫁になっていく姿を描いています。呑まれた後の描写を多めに描いてみたくって。さすがにナントカなると思います。

で、ずっと絵をやってると、左脳がやたら出番を欲しがるわけで。僕はもともと左脳優位人間なので、イタシカタナイことと。ええ。ちょりーん(←こういう謎言動は、だんだん右脳に支配されつつあるのかも)。で、以前から思っていたことについて、レポートを書いてみました。研究対象は「アナログ描きとデジタル描きの差異」ということです。

僕はずっと、このアナ・デジ絵の両者は「絵を描く」という点で一緒だと思い、上手くかけないのは自分の画力のせい、と片付けていましたが、他にも明確な理由があることにも思わず気がついていました(?)。言葉にしたことは無かったのですが、このチャンスにまとめておこうと思い、ぐだぐだと長いレポートを書きました。

言ってることはそれほど目新しくは無いですが、一応、まとめておきたくて。
ではオヒマな方は続きからドウゾ。

■ みんな絵がやたら上手くなった理由のヒトツに

近年、本当に絵の上手い人が増えた。すごいことです。大きな理由のひとつに、CGソフトの進化があると思う。今回は中でも線画について考えたい。しかし、このデジタル作画の人の何割が、アナログで同じ線を引けるだろうか? たとえばピクシブで考えると、僕はおそらく半数以上が、アナログではまともな線画を描けないのではないかと考える。ええ、僕もそのうちの一人である。長い線などはペンが震え、お世辞にもきれいな線ではない。

では何故、CGならきれいな線が描けるか?それは、ソフトによるペン補正もあるだろうが、最も大きな要因はやり直しがいくらでも効く事ではないだろうか。僕も、コミスタでペン入れをしていて、当たり前のように清書の線を「消しゴムで消してやり直している」自分に気がつく。アナログの一発勝負の緊張感はあまり無い。その気になれば、テレビ見ながらでもペン入れが出来る。

■ 僕のバアイ。デジ絵における「ペン入れ」特性

コミスタでのペン入れは、「何を」やっているかというと、僕の場合、かなりの割合で「下書きをなぞって」いる。しかし、コレがアナログのペン入れの場合「絵を描いている」に近い。

この差は、絵を描かない人にはわかりづらいかもしれないけど、決定的な差である。つまり、アナログで最後まで完成させようとするとき、下書きはかなりいい加減でも、ペン画できっちり仕上げられるのに対し、コミスタは下書きがいい加減だと、ペンはかなり苦労する。

何故、アナログと同じことが出来ないか?ひとつは、やはりモニタとペンタブレットのストローク量だと思う。ペンタブレットを右から左へすーっと線を一本引いたとき、モニタの拡大率によって、その線の絶対的な長さは変わってくる。15%(用紙全体が見える大きさ)表示と、100%(ヒトコマ分ぐらいが全部見える大きさ)表示では、原稿に引かれる線の長さが違うということだ。

■ 引きやすい線だと、全体が見えない

100%のほうが、当然線は引きやすい。手が動いたのと同じだけ、線が引けるから。色のつくCGならまだしも、線勝負の漫画では、やはり線にこだわりたい。じゃあ、100%でペン入れすればいいじゃないと思うかもしれないが、コレが曲者である。ちょっと大きいコマでは、コマ全体が見渡せないのである。つまり、女の子の立ち絵、体を描いているとき顔の傾きが見えない、という状況になる。

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これが、コミスタでのペン入れが「下書きをなぞる」しかないということになる。アナログなら常に全体を見渡せるので、ある意味「描きやすい」。これは描きたいイメージが先行するので、自分でも「描いている」気分になる。でも、コミスタは、部分部分は整合性が取れても、コマの外にはみ出したパーツごとは、案外ちぐはぐだったりする。

顔は可愛いのに、胴体がゆがんでる。手足が異様に小さいなど。そういう絵、チマタにあふれてるのは、単純に画力が未熟なだけではなく、こういった理由もあるのではないかと考える。

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■ 別物と考える部分

つまり、デジタルとアナログでは、使う脳が違う部分があるのだろうと(まあ、当たり前って言えばそうなんだけどさ)考える。もちろん、アナログでの経験が充分な人は、もともとの「脳内イメージメモリ」が鍛えられているので、コミスタのモニタのストローク差異や拡大時のはみ出した部分などを補えるのだと思うが、僕のように最初からCGでやってしまうと、この仕様の差異に気がつかず、ああ、画力があがらないなぁとひたすら悩んだりすることに陥るのかもしれない。

では、アナログ未経験はコミスタで上手い絵は描けないのか?否である。実際にいくらでも上手い絵がある。じゃあどうしてるか? 理由のひとつにソフトの修正機能がある。拡大縮小、位置ずらし、当たり前のように行える。デジタルならではの技術である。前述の「ペン入れを消す」という作業もそれだ。

僕は昔、これはなにかインチキくさい技術のように感じていた。こんなことをしていたのでは画力は上がらないと、思っていたこともあった。しかし、デジタルツールは、メリットと引き換えに、かようにもハンデを背負っている。言ってみれば、アナログとはかなり別物といっていいのかもしれない。

このあたりで、僕の考えるアナログ・デジタルの絵描き作業をまとめてみようと思う。カッコの中が脳内で行われている作業イメージだ。

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◆アナログ作業では「脳内のイメージをアウトプットする作業が続く」

①アタリをとり(こんな感じにしようかな~)
②下書きをし(細かいとこ描きこみ……こうしてみようああしてみよう)
③ペンを入れる。(完成図のイメージがだんだん明確になり、それに近づけていく。出来ていく実感)

◆デジタルでは「とりあえず描いてみて、あとからいじることが可能」

①アタリをとり(こんな感じにしようかな~)
②下書き(ペン入れするとき拡大するから、ある程度ちゃんと描いておかなくちゃ……)
このあとデジタルでは
②の2 修正(やばい、ここ大きすぎたな……ここもう少し右だな……)
という修正作業が入り、
③ペン入れ(上手くかけてんのかな……とりあえずなぞろう……おかしきゃ直せば良いや)
のあとにさらに、全体図を見て「アレ!?イメージと違うんだけど……修正。」ということもある

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この経験を繰り返していくと、デジタルでは「どうせ全体が常時見えるわけではないから」と、最終形とかイメージ無しで「適当に描こう~っと。どっかで直せば可愛くなるだろ」的に離陸してしまうことが多くなってしまったりする気がする。とにかくこの「イメージしなくても可愛い絵が描けちゃう」が、デジ絵ばかり描いている者の「画力が上達しない」につながるい決定的な要因になってる気がする。

もちろん、デジタルでもアナログ同様の作業が出来る人も多いだろう。が、そんなひとはそもそもこの差異につまづかないんだろさ。どやさ。

長々と書いて来たが、ここでまとめたかったことは、デジタルにはデジタルの描き方があり、すべてがアナログと同じであると考えてはドツボにはまるぞと。拡大縮小位置ずらし。デジタルのデメリットを補うためにつけられた機能は堂々使って行くべきではないだろうか。

特にバランス感覚に頼るタイプの絵描きの場合(=最終的になんとなく絵として収めることが得意な人とか)、全体が常に見えていないCGは、そのあたりを認識して描かないと、まるでこんにゃくとだいこんとたまごを串刺しにしたおでんの様な絵が出来てしまいかねないことに留意しておくと良いだろう。

さて。これらのメリットデメリットを上手く融合した描き方を見つけたが、それはまたいつかのレポートにさせてもらう。とかもったいぶってみたが、下書きをアナログ、ペン入れをデジタルでするだけなんだけどさ。その為の早いスキャナまた買っちゃったよまったくもう。

以上、久しぶりの長文レポでした。
面白かったかしら。