リボン大作戦

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雨の関東平野です。みなさまいかがお過ごしですか。3月はプリキュア関係の発売が多くて、本やらグッズやら欲しいのばっかりなんですけど、何がいつ発売なのか、もうついていけてなくて。先日もAMAZONを信用しすぎて、バカ高いフィギュアを買ってしまいました。人は情報を与えすぎると、パンクするんですね。

そのグッズ関連のなかでどうしても欲しかったものの、AMAZONで買えない一つ。ローソンでやってる「プリキュアくじ」です。ハートのフィギュアがめちゃめちゃ欲しいんですが、ネット通販とは違い、リアルでの勝負はかなり恥ずかしい訳です。しかし、ローソン探しまくって、3駅向こうに、クジをやってる店を発見しました。

それでは、そんないい歳のプリオタ奮戦記をお届けします。

 

とにかく、ようやくみつけたローソンです。既に「リアルにおけるいい歳プリキュアゲット作戦」は完璧。粛々と遂行するだけです。しかし、そのクジの、グッズが陳列してある場所の前に女児とお母さん。なんとなくジュースみたり、本見たりとうろうろしながらやりすごすことに。ここに切り込む度胸は、まだ、無い。

しかしなかなかどいてくれない。どうやら、女児があたったのが、欲しかった景品と違ったようで、もう途中から大騒ぎ。リボンのぬいぐるみが欲しかったそうです。もう一回やりたいと、絶叫しまくり。あー、プリキュア、女児に愛されてるなぁ~と、なぜかこういうところで嬉しくなったりもする。不思議な気持ち。

お母さんついにキレて、女児を引きずるようにお店を出て行く。ちょっとかわいそうだと思ったけど、これが生きるということ。限りのある資金の中でモノを買う、消費行動というもの。すまんな、オレにはどうすることもできん。とりあえず一安心。やっとクジひける。

プリキュアクジの引き方は、棚に陳列されているカードみたいのを引いて、それをレジにもって行くようなシステムなんですが、もちろん堂々とそれをもっていかず、あくまでも知らないふりして行って「ふーん、こんなのあるんだ、やってみようかな」的な雰囲気をかもし出すという作戦です。かなり練られている、仕上がりの高い作戦なんです。フフフ。

さあ!お腹も空いていないし喉も渇いてないが、パンとグレープジュースをもって、いざ、レジへ。クジへとチャレンジ。メインバトルはここからです。作戦開始!

作戦を復習!(ぇ)。フツーにパンとジュースをお会計しながら、おもむろに「あれ、大人がやってもいいんですか~?ハハハやってみようかなぁ~」というセリフ。完璧。よし。あえて若い兄ちゃんのレジへ。すると突然、きれいなお姉さまにレジが代わった……だと!!

うげええええええ!何そのコンビネーション!?まずここで、いきなりテンパる。作戦の完成度なんにも高くねーじゃん。しかも、その女性、店長さんかしら、もう、大人の、いわゆる仕事の出来そうな「美しい女性(ひと)」。しかもちょっと、いや、かなり好み。ドキドキがとまらない。

しかし、プリキュアへの思いが勝つ。「あ、あはは、あははは、あ、あの、あの、く、クジやってるンデスネ!?オ、オトナガやってもやってもい・い・いいいいいんですかねあは、あははは、あは」完全に挙動不審。お姉さん、満面の笑顔「大丈夫ですよ☆」 

営業スマイルとは言え、やめてくれそんな目で見ないでくれ。だめだ。もう逃げたい。レジから逃げたい。なので「じゃ、じゃあ、あ、あの、あの、カカカカカカード、と、取ってきますね」と脱出しようと。お前やり方しってんじゃねえかとバレだろうが、その時は気づかぬ高石。

が、この緊急脱出も無残に打ち砕かれる「あ、いいですよ、ここからクジ引いてください」と、クジのハコを差し出される。別にカードなくても良いらしい。逃げられなかった。このあたりで吐きそう。クジ引けって言ってるのに、なぜかジュースとパンをかばんにしまっている僕。「何回引きますか?」と、シャイニングスマイルなお姉さん。でも、ここでも深層心理に埋め込まれたプリキュア愛が勝つ「4回!2000円分!」はっきり申請。

ドてんぱりつつ、ハコに手を入れる。入れつつ「ははは、あははは、大人がねぇ、あはは、僕クジ好きなんですよねあははは!ク、クジ運ないんですけどねあははは」と、何言ってるか解らないが、無言ではいられない。クジ好きなのは嘘。クジ運ないのはホント。しかし、事件はまだ続く。

その時お姉さん「私なんか、コレ、何回も引いちゃってますよぉ~」 

…………は? え? いまなんておっしゃいました? え? え?好きなんですか? プリキュア……?え?ええ?ここで思考回路アウト。無理。情報処理能力を超える。瞬間で思う。

「おおおおおおおおお友達になりたい!!!!!」(きもいぞ)

手はロボットのように動き、引いたくじ4枚をカウンターに並べる。なんていって話しかけようか、3グラムの脳みそがフル回転中。その時お姉さんまた輝くスマイルで「めくってください?☆」 あ、そか、めくらなきゃ。なんか、大人っぽいのに可愛い人だなぁちくしょう。まさに青キュア系(水色は含まない)だな、とか。

ぺりっ、ぺりっ、とクジをめくりつつ。このお姉さんのさっきのセリフを考えてしまう。うーん、ご結婚されてて……お子様とかいらっしゃって、その子が見てるのかな……?いや、そうは見えないし……。でも、フツーにプリキュア映画とか行っちゃうのかな……うわー!一緒に行きたいなぁ……いろんなお話したいなぁああああ!!うわー!うわー! 思わず、左手の薬指を確認。指輪はない。跡もない……。

よし!ここで話しかけろ!いまだ!なんか言え!(ちょっときもいけど勘弁してねテンぱってるの)いやなんて言えばいい!?下手打って「プリキュア好きな大人は変な人多い」と思われたくない。製作スタッフに申し訳ない。ここは慎重にならざるを得ない。なんだ!?何が適切なことばだ!なんと言えばいい!?……と、その時お姉さん

「わぁあああすごい!A賞ですよ!!」

えっ!!?ええええっ!!あのでっかいクッション!?えええええええ!!!!!まじで!?キュアハートのフィギュア欲しかったのに……!?交換できますかいやできないですよね!ええええでもクッション嬉しい……!!いやちょっとまて、オレはクジ運ないんだぞ!

登場するクッション。馬鹿でかい。一番大きな袋に入れてもらってもはみ出す。うわああああああああーこれどうやってもって帰るんだああああ……!?うわーうーわーーー……そして、グラス(ちょっと嬉しい)と、ストラップがあたり、へらへらしてしまう。あははははプリキュアぐっずがいっぱ~い!あはは!あははは!……そして。もう一枚がなんと……

リボンのぬいぐるみ。かわいい。

リボンを抱えた瞬間、ニュータイプ的な戦慄が走る。そのあと、背筋に冷気。自動ドアのガラスのちょっと向こう、いる。泣きながらたたずむあの女児。ブチ切れてるお母さん。そして女児に見つかる僕。すごい目線。頬には涙の跡。お母さんも一瞬僕を見て、何かを理解する。あわてて見なかったフリをし、女児になんか怒鳴るのを続ける。

人間の脳は、最新の出来事に反応してしまうようで、一番大事なことがぼやけてしまうのです。大問題はまず、クッションをどうやってもって帰るか……いや、あの女児の目線をどう交わすか。いやいやいや、このリアルかれんさん的なお姉さんにどうやって話しかけるかが最大関心事の筈なのに。クジをさらりと引いて、ハートをつれて帰る高度に練られた作戦など、もう、とうの昔にぶっ飛んでいる。

レジで紙袋はもらったものの、クッション、かなりはみだしている。ブッキーが紙袋から元気に飛び出している。というか、このままドアをでたら、間違いなくあの子と目が合う。抱えたリボンをじっと見る……どうしようどうしよう……リボン、常識ある妖精でちょっと気に入ってるのに……うちの本棚にちょうどおける場所あるぞとか思ってるのに……。

しかし、女児の好きと、僕の好きは、質が違う。作り手たちは、きっと女児の好きを期待して製作している筈だ。僕が喜ぶより、あの子の笑顔が正解だ……いや、みゆきちゃんなら絶対そうする。マナでも絶対そうする。じゃあ、僕がする行動はひとつじゃないか。くそっ!くそっ!くそっ!くそおおおおおお!!!心で号泣しながら自動ドアを出て、ブチ切れてるお母さんにおっかなびっくり声をかけた。一瞬で余所行きの顔になる。女は怖い。

さすがにクッションは勘弁してもらった。かなり早足で歩く。道行く人の視線が自分を見ているように感じる。ブッキー可愛いでしょ。へへん。フレッシュまだ見てないけど。なぜか道中、リボンのことが気になる。せっかく僕のところへ来たのに……大事にしてもらえるかな。あのお母さん、投げつけたりしないかな。でも、あの子の味方になってくれると良いな……。バカな思考と思われるか?製作者てのはこう云うの多いんじゃなかろうか(なんだそりゃ)。

そしてようやく家に戻り、すこし我を取り戻す。クッションすばらしい幸せすぎる……いや、それはそうだが、あのお姉さんと友達になりたい(まだ言うか)。プリキュアのお話たくさんしたい!!でもいきなりそんなこと言ったら完全に不審者だぞ通報されるぞ。立場逆なら、絶対嫌だし。

そうか!仲良くなりたいならまず、接触を増やすべき!!よし!あの店の常連になろう!普段まず使わない3つとなりの駅だけど!そうしよう!

……で、翌日ホントに行ってしまった。レジにはお兄ちゃんとてきぱき動くおじちゃんがいた。あの人には会えず。いきなり冷静になった。

もう行ってない。

おしまい。